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不動産会社は変化する顧客ニーズをどう捉えるべき?信頼感・提案力アップの方法論
こんにちは。「レリーズ」編集部です。
近年、さまざまな市場で「顧客ニーズの多様化」による事業変革の必要性が唱えられていますが、不動産市場でもそれは例外ではありません。不動産市場ではエンドユーザーがインターネット上で情報収集を行うことが当たり前になっており、より多くの情報にアクセスできるようになったため、抱えるニーズも多様なものになっています。
本稿では、そのような時代背景を踏まえ、不動産会社が顧客ニーズを正確に把握したうえで、自社事業に活用する方法について解説します。自社顧客に対し、より成約確率をアップさせられるアプローチを行なっていきたいとお考えの方は、ぜひお役立てください。
不動産業界における顧客ニーズの傾向
そもそもとして、不動産市場におけるエンドユーザーは、どのような基準で不動産会社を選定しているのでしょうか。
不動産市場において、エンドユーザー「不動産会社選びの手段」はデジタルシフトが進んでおり、エキテン総研の行った調査では、6割以上のユーザーが「物件探しサイトを検索」して物件情報を探していることが分かっています(※1)
引用:Design One「『不動産仲介会社に関するユーザーアンケート』を実施~コロナ禍の物件探しは仲介手数料や口コミを「事前に調査」するユーザーが多数~」エキテン総研調べ
さらに、不動産仲介会社を選ぶ基準についてみてみると、約半数のユーザーが「こだわりはない」と回答し、「街の小規模な不動産仲介会社」「大手の不動産仲介会社」と回答したユーザーはそれぞれ2割前後だったとのこと。
つまり、必ずしも「大手不動産会社にしか頼まない」と考えるユーザーばかりではないと言えるでしょう。
引用:Design One「『不動産仲介会社に関するユーザーアンケート』を実施~コロナ禍の物件探しは仲介手数料や口コミを「事前に調査」するユーザーが多数~」エキテン総研調べ
では、何が決め手になるのかというと、同調査では「信頼できるかどうか」を挙げたユーザーが最も多かったと判明。次いで「スタッフや営業マンの提案力」「物件の豊富さ」という回答が続きます。
引用:Design One「『不動産仲介会社に関するユーザーアンケート』を実施~コロナ禍の物件探しは仲介手数料や口コミを「事前に調査」するユーザーが多数~」エキテン総研調べ
顧客ニーズを捉えた提案を行うためには「データ活用」が必要
以上を踏まえると、不動産会社とエンドユーザーの接点は多くがインターネットにあり、大手や仲介は関係なく、信頼感や提案力を重視しているとわかります。しかし、「信頼できる」「提案力のある営業」が大事といわれても、まだまだ漠然としているきらいがあるでしょう。
重要なのは、各社ごとに顧客情報に関するデータの収集・活用を行い、個々人が抱えるニーズをさらに正確に把握することです。
不動産売買の場合、一般的にはポータルサイトからの反響をもとに初回接点を持ち、初回面談や内覧を行いますが、その時点で成約が確定することは稀。初回面談後に、顧客が再調査を行えば、心変わりや状況変化が発生するケースも珍しくありません。
一方で、この“心変わり”をデジタルデータを活用して検知し、ベストなタイミングで最適な提案をできるようになれば、自社の売上を最大化することが可能です。
データを活用して顧客ニーズを可視化するための方法は、次の3ステップに分けられます。
- STEP1.データ収集
- STEP2.顧客データの管理
- STEP3.データ分析を基にした顧客ニーズの推定
以下より、それぞれ個別に解説します。
STEP1.データ収集
収集すべき顧客データには、「定量データ」「定性データ」の2種類があります。定量データは“明確に数値化できるデータ”のこと。定性データは「この不動産会社を選んだ理由は何か」「どのような物件が欲しいのか」といった“数値化が難しいデータ”を指します。
「定量データ」を収集する方法としては、以下のとおりです。
【定量データを収集する方法】
- ポータルサイト・自社サイト上でユーザーがとった行動情報やお気に入り履歴
- フォーム入力による居住地や職業などの確認
- 不動産データサービスの活用
- ポータルサイトや一括査定サイトが発表しているエンドユーザーアンケート
- 顧客アンケート(選択式)
上記のような方法でデータを収集することにより、顧客ごとの「物件提案の質とタイミング」が高まり、顧客満足度アップを図れるでしょう
訂正データの収集方法としては、次のようなものがあります。
【定性データを収集する方法】
- 顧客アンケート(自由回答)
- クレーム内容の確認
- 口コミサイトの確認
- SNSや検索エンジンで自社情報を検索してみる
- 顧客のSNSアカウントの確認
定性データは、自社事業や営業担当の評価と振り返りとして利用可能。ご意見を「反省」とすることで、自社や自社人材の質が高まり、評価軸として活用できます。
STEP2.顧客データの管理
収集した顧客データは、自社で一元的に管理しなければなりません。なぜなら、各社の規模感によって異なるものの、日々自社には膨大なデータが蓄積されていくものの、これらが「社内に散在している状態」では、正確なニーズの可視化は望めないためです。
収集データが社内に散らばってしまっていると、次のような事態も引き起こしかねません。
そのような状態を防ぐためにも、各種デジタルツールを使った「収集データの管理」を行いましょう。
継続的にデータを蓄積・管理をすることで、自社顧客の傾向や売上の波が見えてきますので、経営戦略の策定にもに役立てられます。
とはいえ、そもそも不動産業にはこういった「データを管理する人材」がいないケースも珍しくありません。そのため、自社の長期的な売上拡大を見据えて、マーケティング担当を専任でもうけるのが効果的でしょう。
STEP3.データ分析を基にした顧客ニーズの推定
収集・蓄積されたデータを分析すれば、自社顧客のニーズを推定できます。不動産業界では「セグメンテーション分析」を使って、各顧客のニーズを可視化するのが一般的です。
セグメンテーション分析とは、以下のような定量データに基づき、顧客をグループ分けする分析方法。
- 購入時期
- 購入理由(相続・ライフステージなど)
- 希望予算
- 年収
- 職業
など
以上のようなデータを紐解いて顧客をセグメント(分類)することにより、ある程度ニーズが近しい層でグループ分けできます。その結果として「自社がどの顧客に、どんなアプローチを行うべきか」という戦略策定に役立てられるでしょう。
顧客ニーズに即した提案を実現させるためのツール
ここからは、不動産が定義した顧客ニーズを自社ビジネスに活用するうえで役立つツールを紹介します。
(※情報は2023年2月時点のものです)
顧客ニーズに即した絞り込みを可能にする「MA(マーケティング・オートメーション)」
MA(マーケティング・オートメーション)とは、自社と接点を持った顧客の開拓から育成、絞り込みまでマーケティング活動を、一気通貫で自動化するツールです。
MAツールを使えば「顧客ニーズの可視化に必要なデータの収集」「ニーズに即したアプローチ」を効率的に実施できます。
MAはさまざまな業界で活用されているツールではありますが、不動産業界特化型のシステムとしては、株式会社Housmartが提供する「Propo Cloud」があげられるでしょう。
引用:Propo Cloud
Propo Cloudを使えばメールの開封率や物件閲覧数、提案物件の興味度、リアクション日時が可視化し、ニーズが顕在化しているアクティブ顧客の絞り込みを行える「ホットリード機能」が特徴。自社にとって、より成約確度の高い顧客に対し、優先的にアプローチしていけるようになるでしょう。
その後の追客についても「顧客の希望条件に合った新着物件の自動提案」などの機能により、効率的に行えます。
顧客データの管理・活用を効率化させる「SFA(営業支援システム)」
SFAとは「Sales Force Automation」の略称で、営業活動を効率化するための支援ツールです。例えば、商談がスタートしてからの進捗状況をデジタルデータで可視化することで、顧客ニーズに応じて営業活動を管理していくことが可能
不動産業界でも活用実績のあるものとしては「セールスフォース」が代表的です。
引用:セールスフォース
セールスフォースは顧客情報や営業プロセスを情報を一元的に管理できるツールであり、導入により以下のような機能を利用できます。
- 顧客管理
- 案件管理
- 見込み客管理
- 営業プロセス管理
- 売上予測
- レポート出力
- モバイル連携
これらのような機能を活用することにより、営業活動を大幅に効率化できますので、顧客ごとのニーズに応じてパーソナライズされた提案も行いやすくなるでしょう。
さらに、不動産ビジネスは営業担当者のスキルに依存しやすいという側面もありますが、顧客データを活用・共有できるようになれば、営業スキルの業界未経験の新人教育にも役立ちます。
成約率アップを実現する「不動産データサイト」
不動産売買ビジネスでは、日常的に市場調査・価格相場の把握のためにレインのデータを利用しています。
この内、実際に掲載される成約情報は全体の25%前後であり、残りの75%は過去に売りに出たものの、成約に至らないまま削除されてしまっているのが現状。有効活用できるデータは意外と少ないことが伺えます。
そこで、ネット上に存在する不動産情報や紙広告の不動産流通履歴などが蓄積された「不動産データサイト」を活用すれば、より市場ニーズに即した価格査定・提案を行うことが可能。
そのためのサービスとしてあげられるのが「不動産データクラウド」です。
引用:不動産データクラウド
不動産データクラウドでは、市場に出ている不動産の「取引事例」「売出・販売終了(成約含む)事例」を網羅。物件調査の際に「短時間でスムーズに物件価値を参照する」ためのサービスです。
データの保有数は9,000万事例となっており、以下のような活用方法があります。
- 不動産価格の値付けの確度アップ
- 商圏範囲の拡大
- 買取再販時の出口価格の把握
- 不動産ビッグデータを活用した自社ブランディング
昨今、不動産市場においてはスマートフォンやSNSの普及により、顧客の方が情報に詳しくなってしまっているケースも多々あるでしょう。
しかし、不動産データクラウドのようなサービスを使って、顧客への提案内容に売却査定や価格相場などのデータを“根拠として”示すことで、より成約率アップにつなげられます。
さらに、近年不動産業界で話題になっているソリューションとしては、株式会社Faciloが提供する不動産コミュニケーションクラウド「Facilo(ファシロ)」も印象的です。
引用:Facilo
Facilo「クラウド×AI」で不動産仲介におけるコミュニケーションを一元化・可視化するためのシステム。「情報の整理・見える化」によって、エンドユーザーにとってストレスや不安のない住み替えを実現し、顧客体験のアップを図れます。
不動産会社としても、営業担当とエンドユーザーのコミュニケーションの円滑化につながり、提案内容の質をさらに向上させられるでしょう。
2023年2月に提供開始された理想物件の提案サービス「Serendipity Living Search」
「Serendipity Living Search」は、2023年2月13日に提供が開始されたばかりの物件提案サービスです。
従来のユーザーが指定した条件ではなく、ユーザー属性が近い層の嗜好パターンをAIが分析することで、ユーザーの潜在的ニーズに合致した物件を選別・提案する仕組み。
引用:PR Times「不動産業界初、潜在的ニーズをAI分析し理想物件を提案する新サービス セレンディピティ型お部屋探し「Serendipity Living Search」を提供開始」
物件提案はサービス内アンケートの回答結果に基づいて行われるため、顧客側が条件を細かく指定する必要もなく、物件選びにかかる負担軽減につながります。
さらには、自分ですら自覚できていなかった潜在的なニーズに気づくきっかけにもなり、従来にはなかった不動産取引を創出できるでしょう。
顧客ニーズに応えるためにデータ活用を行った不動産会社の事例
以下より、可視化した顧客ニーズを活用したデジタルマーケティングを実施した不動産会社の取り組み事例を紹介します。
デジタル広告により顧客ニーズの可視化に成功した「東京建物」
Google運営の情報サイトThink with Googleに公開されている情報を参照すると、東京建物株式会社はオンライン広告経由での自社サイトへの流入率アップを実現させた事例が報告されています(※2)。
同社は、見込み顧客のモデルルームへの来訪を促す際に、チラシや不動産ポータルサイト経由だけではなく「自社サイト経由」の顧客数を増やすためにオンライン広告への投資を強化しました。
引用:Think with Google「デジタル広告効果と顧客ニーズをオンラインで可視化に成功した東京建物の事例」
モデルルームに来場した顧客には「先行情報をお知らせする専用ページ」を案内することで、自社ページから「モデルルームの来場」「物件サイト専用画面」へのアクセスを分析できる仕組みを構築。全体的なサイト流入の 7 割以上を広告経由で獲得できるようになったとのことです。
結果的に「ファミリー層 (ライフステージ)」 「不動産に関心の高い層 (アフィニティ)」「不動産物件の購買を検討している層 (インマーケット )」 といった顧客ニーズに応じて、最適な広告施策を行えるようになったとされています。
データ分析システム導入で顧客ニーズに応じたアプローチ数を増やした「ietty(イエッティ)」
株式会社iettyは、2017年にAIテクノロジーツール「IBM Watson エコシステムプログラム」を導入しています。(※3)
IBMは、膨大なデータを分析したうえで、ユーザーから寄せられる複雑な質問を解釈して回答するプラットフォーム。
引用:IBM
例えば、従来は1人の営業担当が1日に物件提案できる顧客数は限られていましたが、IBMを導入すれば「3000~5000人」へのニーズに応じたアプローチが可能です。
さらに、データが蓄積し、AIの学習が進むほど顧客の質問に対する回答の幅も広がり、より顧客ニーズにマッチした物件提案を行えるようにもなっていきます。
まとめ
デジタルテクノロジーの発達により、ますます多様化していく顧客ニーズに不動産会社が応えていくためには、データを活用したニーズの可視化が不可欠です。ツールを使ってデータを収集・分析すれば「自社がアプローチするべき顧客」に対し、より効果的な提案を行えるようになるでしょう。
当社も、不動産売買に特化した不動産テック「レリーズ電子契約」「レリーズ本人確認」を提供しています。
当社は、不動産流通取引における新たな価値創出を目指して、野村不動産ソリューションズ株式会社との業務提携をはじめ、さまざまな取り組みを行っています。
不動産DXに関するお悩みやアイデアをお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。
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<参考>(※URL最終閲覧2023年2月28日)
※1 Design One「『不動産仲介会社に関するユーザーアンケート』を実施~コロナ禍の物件探しは仲介手数料や口コミを「事前に調査」するユーザーが多数~」https://www.designone.jp/news/detail?id=179
※2 Think with Google「デジタル広告効果と顧客ニーズをオンラインで可視化に成功した東京建物の事例」https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/future-of-marketing/digital-transformation/tokyotatemono/
※3 全国賃貸新聞「データ分析コンピューター導入で顧客ニーズに応える」https://www.zenchin.com/news/post-3269.php
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